【ダイカスト加工】インサート成形と掛け合わせるメリット・デメリット

「ダイカスト加工」は、複雑な形状や高い精度が求められる薄肉構造の製品に適しており、自動車部品や電子機器など幅広い分野で活用されています。

さらにお勧めしたいのが「インサート成形」との組み合わせです。金属と樹脂の一体成型により、強度の向上や軽量化が可能になり、部品の価値をさらに高めることができます。

この記事では、ダイカスト加工とインサート成形を組み合わせることによるメリットやデメリットをわかりやすく解説しますので、製造方法選びの参考にしていただければ幸いです。

ダイカスト加工とは

「ダイカスト加工」とは、溶かした金属を高圧で金型に流し込んで製品を成形する方法です。名前は金型を意味する「Die(ダイ)」と鋳物を意味する「Cast(カスト)」に由来し、「ダイカスト」のほかに「ダイキャスト」とも表記されます。

特に、複雑な形状や高い精度が求められる製品の生産に適しており、一度金型をつくってしまえば連続的に成形が可能なため、大量生産にも向いています。

使用される材料は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、真鍮など、比較的融点の低い金属です。中でも「アルミダイカスト」と「亜鉛ダイカスト」は耐久性や軽量性に優れているため、自動車部品や家電製品、電子機器、精密機器など多くの分野で採用されています。

ダイカスト加工の流れ

ダイカスト加工の大まかな流れは以下の通りです。

  1. ダイカスト金型を製作する
  2. 金属を溶かす(溶湯)
  3. 溶湯を高圧で注入する
  4. 冷却する
  5. 金型から鋳造品を取り出す
  6. 仕上げを行う(矯正、研磨、塗装など)

ダイカスト金型にはピンが不可欠です。例えばコアピン(鋳抜きピン)は製品の穴や複雑な形状を成形する際に使用され、エジェクタピン(押出しピン)は成形後に製品を金型から取り出すために使われます。ピンが折損すると生産性が大幅に低下するため、靭性や高温強度、寸法精度などの専門知識が必要です。不具合を防ぐためには、ピン製作を得意とする業者に依頼することをおすすめします。

ダイカスト加工の製品例

ダイカスト加工で製造される製品は多岐にわたります。以下に代表例をまとめました。

  • 自動車部品(エンジン、トランスミッション、ショックタワーなど)
  • 電気・電子部品(パソコン、コピー機、プリンターなど)
  • 家電製品(操作パネルや構造部材)
  • 航空機の内部キャビン部品
  • スマートフォンのフレーム

特に自動車部品では、軽量でありながら強度を保つことが求められるため、ダイカスト加工が広く採用されています。

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ダイカスト加工と鋳造の違い

「ダイカスト加工」と「鋳造」は、どちらも溶かした金属を金型に流し込む加工方法ですが、プロセスに大きな違いがあります。まず、鋳造では重力を利用して金属を金型にゆっくりと流し込むため、製造時間が長くなる傾向にあります。流し込んでいる間に溶湯(溶けた金属)の温度が低くなりやすく、金型の隅々まで行き渡らない「未充填」が発生しやすいデメリットもあります。これにより、製品表面のムラや欠けが生じる場合があります。 

一方、ダイカスト加工では圧力をかけて金属を金型に充填するため、未充填の発生が少なく、製品の精度が向上します。分かりやすく言えば、ホースの先をつまむイメージです。水圧が高まり、一気に放出されますよね。ダイカストなら金属が金型内にしっかりと行き渡るため、複雑な形状の製品も短時間でつくることができます。

製品の要件に応じて、「ダイカスト加工」か「鋳造」を適切に選ぶことで、品質や生産効率を大きく向上させることが可能です。

インサート成形とダイカスト加工の組み合わせ

ダイカスト加工は「インサート成形」と組み合わせて使用されることが多く、製品の性能向上に寄与します。インサート成形は、金型内にあらかじめガラスやプラスチックなどの部品(インサート)を配置し、その周りに金属や樹脂を注入して一体化させる成形方法です。この技術により、異なる材料を組み合わせた製品を作ることができるため、強度や耐久性が向上し、より機能的で高品質な製品が生産可能になります。

具体例として、自動車のシフトレバーが挙げられます。シフトレバーの内側は金属で構成されており、外側は柔らかい樹脂で覆われています。この製品は、別々に製造して後からくっつけている訳ではなく、インサート成形によって1つの工程で成形されています。

高品質な製品を求めるのであれば、ぜひダイカスト加工とインサート成形の組み合わせを検討してみてください。この組み合わせは、製品の性能向上とコスト効率を両立させるための理想的な選択肢となります。

ダイカストのインサート成形のメリット

ダイカスト加工とインサート成形を組み合わせることで得られるメリットを以下にまとめました。

  • 丈夫な部品を作れる
  • 複雑な形状にも対応
  • 表面処理が簡単
  • 高い生産性
  • 軽量化、薄型化が可能

それぞれについて、詳しく解説していきます。

丈夫な部品を作れる

ダイカスト加工とインサート成形を組み合わせることで、金属や樹脂など異なる材料を一体化させて製品を成形できます。別々に作られた部品を後から組み合わせる場合に比べて、接合部分がないため、製品の強度が格段に向上します。異材料を組み合わせた部品が分裂したり破損したりするリスクが大幅に低くなり、長期間にわたって使える製品に仕上げることができます。

複雑な形状にも対応

ダイカスト加工とインサート成形を採用すると、複雑な曲線や細部にまでこだわったデザインでも、品質を保ちながら大量生産が可能です。特に、自動車部品や電子機器の内部構造のように精密さが要求される製品では、この組み合わせが特に効果的です。

表面処理が簡単

ダイカスト加工によるインサート成形では、製品の表面が非常に滑らかに仕上がるため、その後の表面処理がスムーズに行えます。表面処理を施すことで、耐食性や耐摩耗性、抗菌性などの機能を付加できます。このようにして製品の耐久性を高め、見た目をきれいにすることで、商品価値が向上します。

高い生産性

ビジネスにおいて重要な要素の一つは、製造リードタイム(生産リードタイム)です。原材料の加工から製品の完成までにかかる時間が長いと、販売機会を逃すリスクや顧客満足度の低下につながる可能性があります。特に品質やコストで大きな差別化が難しい場合、リードタイムがクライアントから選ばれるかどうかの決め手になることも少なくありません。

ダイカスト加工は高圧をかけて金属を素早く注入するため、成形時間が非常に短くなります。さらにインサート成形では1つの工程で異なる材料を一体化でき、別々に製造するよりも短時間で高品質な製品を作ることが可能です。ダイカスト加工とインサート成形の組み合わせにより生産効率が大幅に向上し、他社よりも競争優位を築くことができます。

軽量化、薄型化が可能

ダイカスト加工とインサート成形を活用することで、部品の軽量化や薄型化も実現できます。例えば、自動車のパーツはかつてほとんどが鉄で作られていましたが、現在ではアルミニウムなどのより軽い合金に置き換えられています。これにより、車全体の軽量化が進み、燃費の向上にも貢献しています。また、金属のみで製品を構成するのではなく、樹脂など他の材料と一体化することで、両方の特性を活かした製品が得られます。具体的には、金属の高強度や導電性を維持しつつ、樹脂の軽量性や絶縁性を取り入れることができます。

ダイカストのインサート成形のデメリット

ダイカスト加工とインサート成形の組み合わせには多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。以下に、具体的な課題と対策について説明しますので、製品の設計段階から十分に検討してください。

初期費用が高額

ダイカスト加工とインサート成形を行う際には金型の作成が必要です。この金型は非常に精密なものであるため、製作費用が高額になってしまうのが難点です。特に少量生産や試作品の場合、初期投資の負担が大きく感じられるかもしれません。しかし、ダイカストのインサート成形は生産性が非常に高いため、大量生産を視野に入れると1個あたりのコストは大幅に下がり、長期的なコスト削減に繋がる可能性があります。製品のボリュームや、形状、精度、材質を考慮して、最適な加工方法を選定することが重要です。

反りやクラックが発生する

ダイカスト加工のインサート成形では、異なる材料を一体化させるため、材料ごとの膨張や収縮の差により不良が発生するリスクがあります。主な問題として以下が挙げられます。

  • 反り:曲がりやねじれが生じ、見た目が悪くなるだけでなく、組み立て時に部品と干渉したり、隙間が生じる原因となります。
  • クラック:ひび割れが生じ、製品の品質を低下させるほか、寸法のズレや水漏れなどを引き起こす原因となることもあります。
  • コールドシャット:充填前に凝固してしまい、不規則な線(つなぎ目)が現れます。
  • ウェルドライン:材料が完全に融合しない状態(融着不良)で、強度が落ちることがあります。

特に、金属と樹脂など、熱膨張率の異なる材料を組み合わせた場合、ウェルドラインが発生しやすくなります。このため、製品の耐久性が低下し、軽い衝撃でも割れや破損が起きやすいため、取引先や消費者からクレームが発生するリスクも高まります。成形不良を完全に防ぐのは難しいですが、経験豊富な業者に依頼することで不良の発生を予見し、適切な対策を講じることが可能です。

まとめ

本記事では、ダイカスト加工とインサート成形を組み合わせることによるメリットとデメリットについて解説しました。

ダイカスト加工は、溶かした金属を金型に流し込んで製品を製造する方法であり、特に複雑な形状を大量生産する際に適しています。このプロセスにインサート成形を加えることで、より丈夫で軽量な製品を生産できます。

一方で、初期費用が高額になることや、反りやクラックなどの製造不良が発生しやすいというデメリットもあります。これらの特性を十分に理解した上で、自社の製品に最適な製造方法を選ぶことが成功の鍵となります。

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