受注生産のメリット・デメリットとビジネスで活用するポイントを解説
受注生産は、製造業の生産方式としてよく取り入れられています。製造業では、需要予測に基づいて事前に製品を生産し、在庫として管理する「見込み生産」も一般的で、多くの企業がこの方式でビジネスを展開してきました。しかし、需要の変動による在庫リスクを避けるため、受注が確定してから生産を行う「受注生産」を採用する企業も増えています。
受注生産を導入する際には、そのメリットとデメリットを慎重に検討することが重要です。この記事では、受注生産をビジネスで活用するための大切なポイントを解説します。
受注生産とは
受注生産とは、顧客から発注を受けてから製品を生産し、納品する仕組みの生産方式です。製造業の生産方式の一つとして、オーダーメイドの製造サービスを提供している企業などでよく用いられています。
受注生産の種類
受注生産には、個別受注生産と繰返受注生産の2種類があります。受注生産によるビジネスでは、どちらの方式で対応するかが大きな課題となり、重要なポイントです。それぞれの方式には独自の特徴があり、ビジネスのニーズに応じた選択が求められます。以下では、個別受注生産と繰返受注生産について詳しく説明します。
① 個別受注生産
個別受注生産とは、顧客から依頼を受けてから設計・生産する方法です。個別受注生産ではオーダーメイド製品の製造ができます。個別に設計を行うため、納品までに一定の時間がかかる点が特徴です。
② 繰返受注生産
繰返受注生産とは、設計が確定した製品を受注に応じて何度も生産する方法です。顧客との相談を経て仕様が決まった後は、同じ内容の発注があった際にその都度生産を行います。この方式では設計から始める必要がなく、設備や金型が整っているため、生産効率が高いことが特徴です。しかし、繰返受注生産を前提に契約しても、顧客が次の生産を依頼しない場合もあります。
見込み生産との違い
見込み生産は、どのくらい売れる可能性があるかを見込んで発注前に生産をする方法です。継続的に売れ続ける可能性が高い製品の場合には、見込み生産をすると発注を受けたときに速やかに納品できます。
安定した需要がある製品の製造に適している方法ですが、受注生産とは違って在庫管理をしなければなりません。また、先行投資をして生産することになるため、生産量の管理も求められます。
見込み生産ではロット生産やライン生産をするのが一般的です。ロット生産ではロット単位で製造し、見込みの販売数に合わせて在庫を用意します。同じ製造設備を他の製品にも使用するときには、設備を有効活用できる生産方法です。
ライン生産は、連続的に流れ作業で生産する方法です。継続的に売れる製品の大量生産を継続する方法として、自動車部品製造によく用いられています。
受注販売との違い
受注販売は、顧客から注文を受けた後に販売する方法で、主に小売業や卸売業で用いられます。受注販売では、注文を受けてからメーカーなどから商品を取り寄せて販売します。受注販売の場合、メーカーに在庫があれば、輸送に数日かかるだけで商品を入手できます。しかし、メーカーに在庫がない場合は、受注生産と同様に製造期間が必要になります。
受注生産に適している製品
受注生産が適しているかどうかは、製品の特性によって異なるため、企業は自社の製品に最も合った生産方式を選ぶことが重要です。受注生産に適している代表的な製品は以下の通りです。
・製造原価が高い製品(船舶・航空機・自動車のエンジン部品、医療機器など)
・販売数が少ない製品(高級家具、工作機械、特殊な試験装置など)
・カスタマイズが求められる製品(特殊な機械部品、自動車のカスタムパーツ、電子機器のカスタム基板、スーツ、オーダーメイド家具など)
受注生産は製造原価が高く、販売数が少ない製品に向いています。在庫を抱えて売れないと大きな損失になるリスクがあるからです。また、オーダーメイドのスーツや家具などのカスタマイズ付きのサービスを提供する場合にも、個別対応が必要なので受注生産に向いています。
また、注文してから納品されるまでの期間が長くても受け入れられてもらいやすい注文住宅なども受注生産にしやすいでしょう。
受注生産に適さない製品
受注生産にしてもなかなか売れなくて困る場合があります。以下のような製品は受注生産には適していないので注意しましょう。
・消耗品で安定した売上を期待できる製品(文房具、印刷用紙、加工食品など)
・一定数以上の需要や販売数を見込める製品(自動車、家電製品、パソコンなど)
・原価率や製造単価が低くて利益を確保しやすい製品(化粧品、健康食品など)
いつでもすぐに手に入るのが当然と思われている消耗品は、受注生産でニーズに応えるのが困難です。一定以上は売れると期待される製品も、最低限は見込み生産をしておいた方が販売効率も生産効率も上げられます。原価率が低い製品も在庫があった方が営業やマーケティングがしやすいので、トータルで見ると見込み生産をしておいた方が良い場合があります。
受注生産のメリット
ここでは、製造業で受注生産をするメリットを解説します。
① 在庫管理のコストがかからない
受注生産なら在庫管理のコストがかかりません。在庫数の把握や品質管理、在庫を保管するスペースの確保が必要ないのがメリットです。過剰在庫によって廃棄コストがかかるリスクもありません。
② 製造設備の規模を調整しやすい
受注生産では、製品の種類によってどの程度の数量の注文があるかを想定できます。製造設備の規模を調整して用意できるため、導入コストやメンテナンスコストをコントロールしやすいのがメリットです。
③ 多様化する顧客ニーズに対応できる
受注生産は、顧客満足度・顧客体験を高められる生産方法です。多様化する顧客ニーズにカスタマイズして製品を製造できるからです。顧客とのコミュニケーションも増えるため、打ち合わせやアフターフォローを通し、自社にとって強みになるアイデアを見出せる可能性もあります。
受注生産のデメリット
受注生産には良い面ばかりではありません。ここでは、受注生産によるデメリットを解説します。
① 製造コストが高い
受注生産は、ライン生産などの自動化による大量生産に比べると、製造コストが高くなることがあります。また、市場には同じような製品で価格が抑えられたものが存在するため、価格の比較が行われることもあります。しかし、受注生産は顧客のニーズに特化した製品を提供できるため、その独自性が価値を生む要素となります。このような特性を強調することで、ビジネスチャンスを最大限に活かすことが可能です。
② リードタイムが長い
受注生産では、リードタイムが長くなることがあります。在庫品であれば即納可能ですが、受注生産の場合、素材や部品を調達し、製造や検品を行う必要があります。このプロセスでは、材料や設備の確保が重要で、しっかりとした計画を立てることで、納期を見積もることができます。商談時には、これらのプロセスをお客様にしっかりと説明することで、信頼を得られるチャンスになります。
③ 受注後の対応負担が大きい
受注後の顧客対応において柔軟性が求められることがあります。顧客から仕様変更のリクエストがある場合もありますが、これによりさらなるカスタマイズが可能となり、より満足度の高い製品を提供する機会になります。仕様変更が発生した場合には、適切なコミュニケーションを通じて、発注した素材や部品を有効活用し、効率的な製造プロセスを維持することが重要です。
④ 素材や部品の管理が求められる
受注生産の効率を上げるためには、汎用性のある素材や部品を在庫しておき、速やかに製造を開始できるようにすることが重要です。ただ、素材や部品の種類が多いときには管理の負担が大きくなります。設計や生産などのさまざまな部門で個別管理していると、全体管理ができずに在庫が重複する場合もあります。素材や部品の管理負担がある点には特に注意が必要です。
受注生産のビジネスで重要なポイント
受注生産のビジネスではデメリットを克服しつつ、メリットを生かせる仕組みを整えることが重要です。ここでは受注生産でビジネスをするときに必要なポイントを解説します。
生産管理をシステム化する
受注生産では生産管理のシステムを導入して、進捗や受注状況を一元管理できるような仕組みづくりが欠かせません。生産設備や人材などのリソースも把握できるようにすれば、新規受注の際にも納期を見積もりやすくなります。仕様変更への速やかな対応もしやすく、材料や部品の在庫を把握して発注できるので、受注生産ビジネスを全体的に効率化できます。
材料や部品の製造・販売会社と連携・協力する
材料・部品の製造会社や販売会社と連携して、受注したときにリードタイムを短くすることも重要です。受注生産では材料や部品は複数のチャネルから調達できるようにして、納期を早められるようにする工夫も有効です。製造コストとの兼ね合いもあるので、効率的に複数社と協力できる関係を作りましょう。
パートナーを増やして対応力を高める
受注生産では自社の技術では対応しきれない、要求された価格では生産できないといった場合があります。新しい技術を取り入れて対応力を高め、製造コストの削減に努めることが大切です。パートナーを増やしてさまざまな生産フローを作れると、ニーズに合った対応をしやすくなります。技術力のあるパートナーがいれば、営業やマーケティングにおける強みとしてアピールもできるので効果的な対策です。
まとめ
受注生産は、顧客からの発注を受けてから生産を行うため、在庫管理のリスクやコストを大幅に削減し、顧客満足度の高い製品を提供します。しかし、見込み生産と比較するとリードタイムが長くなることや、個別対応が増えることで製造コストが高くなりがちです。
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